リヤド(サウジアラビア)26日=吉村 達】調教師に転身する福永祐一騎手(46)=栗東・フリー=の現役ラスト騎乗は、リヤドダートスプリントのリメイクで3着。最後までこん身騎乗を貫いた名手の姿を吉村記者が「見た」。
最後の最後も、騎手の仕事を味わい尽くした。最後の直線。後方追走から外に持ち出されたリメイクが、ぐんぐん加速していく。背中には、いつになくパワフルに追いまくる福永。最後まで前を追い抜こうと人馬一体で食い下がった。米国勢2頭に続いてゴール。華やかな実績に彩られた27年間の戦いが終わった。
ウィナーズサークルの近くまで引き揚げてきた時だ。馬上から後ろを振り返り、走ってきたばかりのホームストレッチに目をやった。「こんなきれいな競馬場で終えることができた」としみじみ。観客席から「ユーイチ!」と騎手人生最後の声援が飛ぶと、軽く右手を挙げて応えた。
馬を下りて鞍を外すと、リメイクのオーナーで、3冠馬コントレイルを生産したノースヒルズ・前田幸治代表が出迎えた。「デビューした頃からお世話になっていて。『いいレースをしてくれた。来て良かった』と言っていただきました。騎手冥利に尽きます」と充実感をにじませた。
ジョッキールームに戻ると、今度は海外の名手たちが待っていた。「フランキー(デットーリ)やライアン(ムーア)、ダミアン(レーン)にモレイラも。みんな最後だと知っていて祝福してくれて。うれしかったですね」と“戦友”たちとの交流を楽しんだ。
3月からは技術調教師としての研修期間に入る。「人間の勝手は馬にとって迷惑でしかない。何が馬にとってベストなのかを常に考える。それが自分のホースマンシップ」。開業後の福永厩舎の方針をじっくり考えながら、国内外を問わずに研鑽(さん)を重ねていくつもりだ。
「次は調教師として競馬の楽しさを伝えていけたら」と福永。誰からも愛されたジョッキーは、はっきりとした目的意識を胸に秘め、ステッキを置いた。