2024年は、チェスのグランドマスターであるR.ヴァイシャーリにとって画期的な年となりました。インド人女性として史上3人目のグランドマスター(GM)の称号を獲得し、チェス・オリンピアードでインドチームを金メダルに導いた中心人物として活躍しました。そして、この年の締めくくりとして、ニューヨークで開催された世界ラピッド&ブリッツ選手権のブリッツ部門で銅メダルを獲得しました。
チェンナイ出身の23歳の彼女は、The Times of India(TOI)の独占インタビューに応じ、この激動の一年と今後の展望について語りました。
ラピッドでは苦戦、ブリッツで挽回
「正直言って、ラピッドの試合は全然うまくいきませんでした。その時は体調も悪くて…。でも、ブリッツの前に少し回復する時間が取れたのが良かったです。ブリッツでは、結果がどうであっても大丈夫だと自分に言い聞かせて臨みました。今年は本当にいろいろなことがあり、早くこの一年を終えたいと思っていました。そんな中でこの結果を出せて、正直ホッとしています」とヴァイシャーリは振り返ります。
体調不良とアメリカ初体験
体調不良について問われると、彼女は「風邪をひいてしまい、気候に慣れるのが大変でした。アメリカに行くのは初めてで、寒さがとても厳しかったです。それに、時差ぼけを克服するのにも数日かかりました」と語りました。
ラピッドでの失敗からの立ち直り
ラピッドの結果に失望したことについて、「この大会をすごく楽しみにしていたので、結果が悪かった時はがっかりしました。でも、自分に『これはラピッドとブリッツだ。そこまで深刻に考えなくていい』と言い聞かせました。今年の終わりが近づくにつれ、結果よりもこの一年をどう締めくくるかに集中するようになりました。不思議なことに、結果をあまり気にしない方が良いパフォーマンスにつながった気がします」と述べています。
家族の支え
兄であり同じくグランドマスターのR.プラグナナンダとの同行については、「もちろん、誰かがそばにいるととても助かります。今回は母が同行していなかったので、兄と二人きりでした。彼もラピッドでは惜しくもメダルを逃すという悔しい結果に終わりましたが、それでも一緒にいることでお互いに支え合えたと思います」と語りました。
大会に向けた準備
11月にコルカタで行われた最後の大会の後、必要な休養を取ったと彼女は言います。「9月から11月まで試合が続いていて、休養が必要でした。その間にしっかりとリフレッシュし、ブリッツゲームをプレイして普段のトレーニングルーチンに戻りました。サンディパン先生(WACA=WestBridge Anand Chess Academy)やラメッシュ先生との定期的なセッションも続けました」と述べました。
コネール・ハンピーの快挙に学ぶ
同じインド人女性プレイヤーであるコネール・ハンピーがラピッド部門で優勝したことについて、「素晴らしい成果であり、私にとって大きな励みになりました。たくさんの責任を抱えながらも、彼女はメダルを獲得し続けています。彼女の試合をここでライブで観られたことは本当に感動的でした」と語ります。
女性タイトル廃止への考え
女性チェス界の象徴的存在であるジュディット・ポルガーが最近、「女性タイトルは廃止すべき」と発言したことについては、「私も同感です。キャリアの初期には、WIM(国際女性マスター)やWGM(女性グランドマスター)のタイトルが偽りの達成感を生むことがあると感じていました。オープンカテゴリーではこれらのタイトルにはあまり価値がなく、GMタイトルを目指すモチベーションを下げてしまうことがあります。これらのタイトルは当初、FIDEが女性の参加を促進するために導入したものですが、現在ではチェスを積極的にプレイする女性が増えています。このタイトルを廃止することで、より多くの女性が直接GMタイトルを目指すきっかけになるのではないでしょうか」と述べました。
2024年はヴァイシャーリにとって試練と成果が入り混じる特別な一年となりました。彼女の前向きな姿勢と家族の支えが、さらなる高みへの原動力となるでしょう。